【10】イスラーム世界
(1)ムハンマド時代
(2)アラブ帝国からイスラーム帝国へ
(3)西方イスラーム世界
(4)東方イスラーム世界
(5)アフリカ・東南アジアのイスラーム化
(6)イスラームの社会・文化
■ イスラーム教の誕生秘話
ビザンツ帝国 VS ササン朝 戦い
争いを避けて商人は南下。アラビア半島を行くようになる。
・アラビア半島(アラブ人)
メッカ
クライシュ族の支配、多神教、貧富の差
・ムハンマド(570~632)
メッカで生まれた。クライシュ族。ハーシム家。
神の啓示(610)→イスラーム教の創始。
■ ムハンマドの苦難の道
・ヒジュラ(622)聖遷
(=イスラーム暦の元年)
メッカで迫害。メディナへ移動
・ウンマ(イスラーム共同体・国)
・メッカを征服(630)
・ムハンマド死去(632)
・イスラーム・・神への絶対的服従。
・ムスリム・・イスラーム教徒。信者はみな平等。
■ イスラーム教
・アッラー・・唯一神
・「ムハンマドは『最後』にして最高の預言者」⇒モーセやイエスも預言者として認めている。イスラーム教はユダヤ教やキリスト教に影響を受けて生まれた。
・偶像崇拝の禁止。聖職者は存在せず。
・『コーラン』(クルアーン)・・聖典(650)
アラビア語で「読誦すべきもの」
・六信五行
(五行)
喜捨・・貧しい人への施し
断食・・ラマダーン
・カーバ神殿(メッカ)
立方体。メッカはイスラム教徒しか入れない。
イスラームの聖地:メッカ
第2の聖地:メディナ
第3の聖地:イェルサレム
・正統カリフ時代(632~661)30年
カリフ・・代理人。
ムハンマドの後継者。宗教的指導権はない。アッラーの声は聞けない。
・「正統カリフ」・・選挙で選ばれた4人
1. アブー・バクル
2. ウマル
3. ウスマーン(ウマイヤ朝)「コーラン」編纂
4. アリー
領土拡大
・ジハード(聖戦)
神のため自己を犠牲にして戦う。
・ニハーヴァンドの戦い(642)
正統カリフ〇 VS ✕ササン朝ペルシア(イラン・イラクを征服)
・ビザンツ帝国からエジプト・シリアを奪う
・ミスル(軍営都市)を各地に建設
■ ウマイヤ朝の支配は苦痛
ウマイヤ朝(661~750)約90年
(都:ダマスクス)
・ムアーウィヤ(建国)シリア総督
カリフをウマイヤ家の世襲にした。さらなる領土拡大。
・西ゴート王国の征服(711)
イベリア半島。ゲルマン人国家。
・トゥール・ポワティエ間の戦い(732)
ウマイヤ朝✕ VS 〇フランク王国(メロヴィング朝)宰相カール・マルテル
・アラブ人のみ優遇、免税。
非アラブ人(イラン人、エジプト人)は、イスラーム教でもジズヤ(人頭税)、ハラージュ(地税)が課税される。
■ アッバース朝の支配は完璧
アッバース朝(750~1258)
(都:バグダード)
アブー・アル・アッバース(建国)(位749~7)
・タラス河畔の戦い(751)
唐✕ VS 〇アッバース朝
製紙法が唐から伝わる。
・5代 ハールーン=アッラシード(全盛期)
イスラーム帝国
・イスラーム教徒はハラージュのみ払う。
※人種に関係なく、イスラーム教徒はみなジズヤ免税。
・非イスラーム教徒はジズヤとハラージュを払う。
・アミール(軍隊の司令官・総督)が自立化
・モンゴル・フラグにより滅亡(1258)
1.後ウマイヤ朝
2.ムラービト朝
3.ムワッヒド朝
4.ナスル朝
1.後ウマイヤ朝(756~1031)
都:コルドバ
2.ムラービト朝(1056~1147)
北アフリカのベルベル人が建国
3.ムワッヒド朝(1130~1259)
ベルベル人
4.ナスル朝(1232~1492)
都:グラナダ
アルハンブラ宮殿(獅子の噴水)
レコンキスタ
■ エジプトの王朝は商売上手!?
1.ファーティマ朝
2.アイユーブ朝
3.マムルーク朝
1.ファーティマ朝(909~1171)
・シーア派。こだわりの強い派。
アリーの子孫のみが後継者と認める。(子孫のみにシーヤ)
・アズハル学院・・イスラム最古の大学
2.アイユーブ朝(1169~1250)
・サラディン(建国)
・十字軍
3.マムルーク朝(1250~1517)
・カーリミー商人を保護(アイユーブ朝の頃から活躍)
木造船を使った貿易。エジプトに莫大な富をもたらした。
ダウ船。三角の帆。地中海、インド洋。
(cf:中国商人はジャンク船)
(4)東方イスラーム世界
■ 中央アジア。東西交易の要衝にイスラーム教が浸透!
1.サーマーン朝
2.カラハン朝
3.西遼(カラキタイ)
4.チャガタイ・ハン国
カスピ海の東辺り。
1.サーマーン朝(875~999)
多くのトルコ人奴隷を西アジアに輸出して利益を得ていた。
2.カラハン朝(940~1132)
最初のトルコ系イスラーム王朝(※トルコ人奴隷が乗っ取った。)
3.西遼(カラキタイ)(1132~1211)
耶律大石(建国)(中国系)
(北宋時代に遼(契丹)が金に滅ぼされ、西へ逃げてきた。)
4.チャガタイ=ハン国(1227~14C後半)
(モンゴル系)
■ 西アジアが支配したイスラーム王朝
1.ブワイフ朝
2.セルジューク朝
3.ホラズム・シャー朝
4.イル・ハン国
カスピ海の南
1.ブワイフ朝(932~1062)
・シーア派
・バグダード入城。アッバース朝のカリフに圧力をかけ、大アミールの称号を得る。軍事、行政権を獲得。
2.セルジューク朝(1038~1194)
(トルコ系)
・トゥグリル・ベク(鷹の君主)(建国)
・ブワイフ朝を滅ぼしアッバース朝のカリフを救済。スルタンの称号をもらう。
・ビザンツ帝国を撃破。小アジア、エルサレム。十字軍の原因となる。
・イクター制の整備(ブワイフ朝で始まる)
軍人・官僚に土地の管理と徴税権を与えた制度。(給料を現金でなく)
3.ホラズム=シャー朝(1071~1231)
アフガニスタン方面へと領土拡大
→モンゴル・チンギス・ハンにより滅亡(1220 or 1231)
4.イル・ハン国(1258~1353)
・フラグ(建国)
アッバース朝を滅ぼす
・ガザン=ハン(全盛期)
宰相ラシード=アッディーン『集史』
■ インドにイスラーム教が浸透
1.ガズナ朝
2.ゴール朝
3.デリー・スルタン朝
ー 1.奴隷王朝
ー 2.ハルジー朝
ー 3.トゥグルク朝
ー 4.サイイド朝
ー 5.ロディー朝
インドがヒンドゥー教からイスラーム教へ。
アフガニスタンから西北インドに成立した王朝
1.ガズナ朝(962~1186)
北インドに侵入を繰り返し、ヒンドゥー教の寺院を破壊。
フィルドゥシー『シャー=ナーメ』
2.ゴール朝(1148~1215)
北インドのイスラーム化を促進。
3.デリー・スルタン朝(1206~1526)
インド初のイスラーム王朝。
五つの王朝をまとめた言い方
(都:デリー)
①奴隷王朝(1206~1290)
・アイバク(建国)元奴隷
アフガニスタン(インダス川の西)からインドの西北
・クトゥブ・ミナールを建設(高い塔・イスラーム寺院)
インド最古の大モスク
②ハルジー朝
③トゥグルク朝
④サイイド朝
⑤ロディー朝
■ アフリカにも広がるイスラーム!?
〇西アフリカ(ニジェール川流域)
・サハラ交易
ニジェール産:金
↑↓
サハラ産:岩塩
1.ガーナ王国
2.マリ王国
3.ソンガイ王国東南アフリカ
・モノモタパ王国スワヒリ文化(アフリカ東海岸)
・マリンディ、モンバサなど
1.ガーナ王国(7C~)
2.マリ王国(1240~1473)
(都:トンブクトゥ)
マンサ=ムーサ
3.ソンガイ王国
(都:トンブクトゥ)
〇東南アフリカ(ザンベジ川流域)
・モノモタパ王国(11~19C)
大ジンバブエ遺跡
〇アフリカ東海岸
・スワヒリ文化
スワヒリ語
現地語+アラビア語
スワヒリ文化の都市:マリンディ、モンバサ、ザンジバル、キルワ
■ 東南アジアは一部だけイスラーム化
イスラム商人が船で立ち寄る港町
1.マラッカ王国(マレー)
2.マタラム王国(ジャワ東)
3.アチェ王国(スマトラ北)
・マラッカ王国(14C末~1511)
マレー半島
・マタラム王国(1580~1755)
ジャワ島・東
・アチェ王国(15C末~1912)
スマトラ島・北
(6)イスラームの社会・文化
■ 活気にあふれるイスラーム社会
社会基盤
・シャリーア・・イスラーム法
(コーランやハディースが基となる)
・ハディース・・ムハンマドの言行の記録
・モスク・・礼拝施設。
ミナレット(光塔)が付いている→礼拝への呼びかけ
・マドラサ・・学院
・ウラマー・・学者・知識人
・ワクフ・・財産寄進の制度。モスクやマドラサの運営。
・市場・・スーク、バザール
・キャラバンサライ・・隊商宿
■ ヨーロッパよりも優れた高度な文明?!
ギリシアの哲学や科学がさらに発達。
文学
・フィルドゥシー『シャー=ナーメ(古代イラン王の書)』(10C)
ガズナ朝でイラン=イスラーム文化が開花。ペルシア文学の最高峰。
・ウマル=ハイヤーム『ルバイヤート』四行詩集(11~12C)
(セルジューク朝)
・『千夜一夜物語』『アラビアン・ナイト』(→ルイ14世から欧に広がる)
歴史学
・イブン=ハルドゥーン『世界史序説』(14C)
王様ではなく、人々の社会生活、環境(農業、商業など)に固有の文明があると考えた。当時、中国や欧にもない考え。
チュニス生まれ→ナスル朝(グラナダ)→晩年はマムルーク朝(カイロ)で仕えた。
旅行家
・イブン=バットゥータ『三大陸周遊記(旅行記)』(1304~1368?)
モロッコ(タンジール)生まれ。中国、インド、西アジア、アフリカなどを旅する。
哲学・神学
・イブン=ルシュド(ラテン語名:アヴェロエス)(11~12C)
アリストテレスの全著作に分かりやすい解説を付けた。→欧でも読まれる。
・ガザーリー・・スーフィズム(神秘主義思想)を研究。神をもっと近くに感じよう。体で表現。踊りながら神を感じる。一般に受け入れられた。
科学(医学・数学)
・イブン=シーナー(ラテン語名:アヴィケンナ)
『医学典範』(10~11C)手術、薬の研究。→欧で読まれる。
・フワーリズミー・・インド数学を導入。代数学の発展。
芸術
・アラベスク・・美術工芸品、建築の模様(植物の茎など)
・細密画(ミニアチュール)・・精密な技法。挿絵、写本の絵画。