【15】明・清の時代
(1)明の成立と中央集権化
(2)永楽帝の時代と明への外圧
(3)晩年の明と清の中国侵入
(4)清の全盛期をみる
(5)清の中国統治と社会経済
(6)明・清の文化(1)
(7)明・清の文化(2)
(1)明の成立と中央集権化
ポイント①久しぶりに漢民族の国家が復活!
紅巾の乱で元が滅亡。
→明の建国
洪武帝(朱元璋)太祖(位1368~1398)
(都:南京)
「自分に力を集める」皇帝独裁政治
↓↓
・中書省(皇帝の命令を作る機関)の廃止、丞相(サポート)の廃止
・六部(行政)を皇帝直属に
・朱子学の官学化(官僚必須の学問)
・一世一元(いっせいちげん)の制(天皇一人につき一つの元号。洪武帝の世はずっと「洪武」という年号。)
・明律・明令
・海禁・倭寇への対策
→民間の対外交易・海外渡航を禁止
→朝貢貿易を促進(周りが頭を下げに来る。)
ポイント②民衆を徹底して管理するシステム
地方行政と民への教育
・魚鱗図冊・・土地台帳
・賦役黄冊・・戸籍・租税台帳
・里甲制・・村落。農家110戸で1里。正確な人口を把握。租税・治安維持。
・衛所制・・軍戸と指定された家が軍事訓練を受ける。免税。
・六諭(りくゆ)の発布(1397)・・朱子学の考えを広める。里老人=先生。「父母を大切に」など。
ポイント③皇帝がクーデタで即位!?
2代目・建文帝(洪武帝の長男の子)
側近の進言により、一族の勢力削減を試みる。
→燕王(洪武帝の子)の挙兵
靖難の役(1399~1402)
(2)永楽帝の時代と明への外圧
ポイント①明の全盛期!
3代目・永楽帝(位1402~1424)約20年
「外へ拡大」
・北京へ遷都(元々の自身の防衛地・燕)。紫禁城(現・故宮博物院)
・内閣大学士(政務補佐)の設置
・宦官の重用(クーデターの後ろめたさからか官僚よりは宦官・側近を使っていた)
・ベトナム出兵
一時ベトナムを支配(1400~1428)
・モンゴル遠征
皇帝自ら5回の遠征
・鄭和(イスラーム教徒の宦官)
南海諸国遠征(1405~1433)7回の遠征
東南アジア・インド・西アジア・東アフリカ
朝貢貿易を促した。
ポイント②北から、南から…明を襲う外部勢力!
モンゴル系民族の侵入と倭寇の侵入
永楽帝の死後・・
北虜南倭(ほくりょなんわ)=外部からのプレッシャー
<北から>
オイラト・・西北モンゴリア
・土木の変(1449)
オイラトのエセン=ハン(モンゴル勢力を統合)が明の正統帝を捕縛
タタール・・東モンゴリア
アルタン=ハン 北京を包囲
↓↓
・万里の長城を修築。侵入に備える
<南から>
倭寇・・海賊集団
・前期倭寇(14C)
日本人。朝鮮半島から遼東半島にかけて略奪。
・後期倭寇(16C)
中国人。海禁に反発し武装した民間商人の略奪行為。
↓↓
これらの対応により明は財政難に・・
(3)晩年の明と清の中国侵入
ポイント①皇帝の力は弱くなるのに明は長生き!→貿易で繁栄していたから。
明末の財政改革と混乱の時代
明の財政改革
・貿易活動の活発化
日本銀やメキシコ銀(スペイン)の流入。ヨーロッパは大航海時代。中国で買い物をするので明は儲かる。西アジア、インド、日本からも。
・一条鞭法(いちじょうべんぽう)の普及(16C後半)
土地税と丁税・ていぜい(人頭税)を銀で納める
14代・万暦帝(神宗)(位1572~1620)
宰相・張居正の改革
明末の政治争い
東林派・・東林書院(顧憲成が再建した学校)出身の官僚
VS
非東林派・・宦官と結託
→政治が乱れる
明の滅亡
・豊臣秀吉の朝鮮侵略
(1592文禄・1597慶長)
朝鮮は中国の弟分なので、明は助け(援軍)を出した。財政難に。
・李自成の乱
農民反乱の指導者。
北京の攻略。
→明の滅亡(1644)
ポイント②中国の北側に新しい国家が誕生!
満州人の国家建設
後金(こうきん)(1616~1636)
初代・ヌルハチ(ツングース系)
女真(金を作った民族)を率いて建国→後金は後に満州と改称
・八旗の編成(軍隊)
・満州文字の制作
2代・ホンタイジ
中国へ侵入開始
・チャハル(内モンゴル)を征服(1635)
・国号を後金→清と改称(1636)
=「今から中国を支配するぞ」のアピール
・朝鮮を属国化(1637)
ポイント③中国人ではない民族が中国を支配!
清の北京入城と反抗勢力
清(1616~1912)
3代・順治帝(1643~1661)
1644 明が滅亡。
(清に賛成)
・呉三桂(元・明の武将)が清に協力。
関所を開けた→北京へ誘導。
→清は李自成を倒し、北京を新しい都とする。
(清に反対)
・鄭成功(1624~1662)
清には反対。明を復興させたい。
「反清復明」はんしんふくみん
オランダ人を追い出して台湾を占拠。
→鄭氏台湾(1661~1683)を建国。
清に抵抗する拠点となる。
国姓爺(こくせんや)・・鄭成功の異名。明の一族から国王の名字をもらった英雄の意味。
『国姓爺合戦(こくせんやかっせん)』近松門左衛門の人形浄瑠璃。
(4)清の全盛期をみる
ポイント①中国史の皇帝の中でもNo.1!
平和で安定した時代。
4代・康煕帝(位1661~1722)61年間
「満州人が中国全土を支配する。漢人をつぶす」
藩王(清に協力した漢人武将・呉三桂など)の勢力削減
・三藩の乱を鎮圧(1673~1681)
・鄭氏台湾を征服(1683)
・地丁銀制(18C前)
地銀(土地税)の中に丁税(人頭税)を繰り込み一括して銀納。
人が増えても税金が変わらない→人口増加。
・ネルチンスク条約(1689)
ロシア皇帝・ピョートル1世と清・康煕帝
ロシアと清の国境を取り決めた:アルグン川~スタノヴォイ山脈(中国では外興安嶺・がいこうあんれい)
・外モンゴルを併合(1696)
・典礼問題
中国古来の先祖崇拝にキリスト宗派が反発。
イエズス会は承認。
→イエズス会以外の布教を禁止(1711)
ポイント②目立たないけど実はすごい!?
5代・雍正帝(位1722~1735)13年
・キリスト教布教の禁止(1724)
中国文化を守る
・チベット併合(1724)
・キャフタ条約(1727)
ロシアと外モンゴルとの国境を決める
・軍機処の設置(1729)
異民族統治の軍事機関→政務も兼ねる。
ポイント③いまの中国と同じ!? 清の最大領土!
6代・乾隆帝(位1735~1795)60年
(康煕帝を超えないように自分で降りた。)
・制限貿易の開始(1757)
貿易港を広州1港に限定。
銀が外に出て行かないように。国内で回すようにした。
・公行の設置
貿易を独占できる特権商人
・ジュンガルの併合(1758)(康煕・雍正の頃からの宿敵)
→現・新疆の設置
(東トルキスタン一帯の地域。中央アジア。)
(5)清の中国統治と社会経済
ポイント①清の支配領域と軍事制度
広大な領土。統治の工夫。
清の領土
・直轄地:満州(中国東北)・台湾・中国本土(旧明)
・藩部・・非漢人が優勢な地域
理藩院・・藩部に大幅な自治を与えて監督する
(唐の羈縻政策・都護府と同じ)
清の軍事制度
・八旗(軍事・行政)・・ヌルハチが編成。満州、モンゴル、漢の三軍
・緑営・・漢人のみの正規軍。治安維持など警察業務を担当。
ポイント②清のとった「アメ」と「ムチ」
少数の満州人が大多数の漢民族を統治するための工夫。
清の「アメ」
・六部:皇帝直属の行政最高機関。(明から受け継ぐ)
・科挙(明から)
・満漢併用制
重要な官職を満州人、漢人を同数任命。
清の「ムチ」
・辮髪の強制
・文字の獄(もんじのごく):反清・反満的な書物の弾圧。言論・思想弾圧
・禁書:思想統制のため特定の書籍を禁ずる。
ポイント③明と清は世界で一番お金持ち!?
明・清時代の経済活動をみる。農業・商業・貿易の3つ。
明・清時代の社会
〇農業の発達
米(中流)と商品作物(下流)がバランスよく作られる。
・「湖広(ここう)熟すれば天下足る」(明代中頃)
長江中流域の米の生産が下流域の生産をしのぐ。
cf:宋「蘇湖(そこ)(江浙(こうせつ)熟すれば天下足る」=長江下流。下流は商品作物になる。
・商品作物の栽培。茶・綿・桑
〇商業の活性化
・徽州(きしゅう)(新安)商人・・専売塩で大きな利益。
・山西商人・・北辺の軍糧補給、専売塩、金融。
国はこれらの商人から税金を取る。保護する。お互いうまい関係。
・会館、公所・・同業、同郷の商人や職人が建設。親睦・互助。
〇貿易
輸出品(よく売れる)
・生糸・・絹織物の重要材料
・陶磁器・・染付(元後期)、赤絵(明)
・貿易港・・蘇州(江蘇省)、杭州(浙江省)、広州(広東省)→乾隆帝時代は広州1港に限定。
(6)明・清の文化(1)
ポイント①国が思想を統一するための手段
明・清の国家編纂事業。国家の目線から見た文化。
【明代】4つ
・『四書大全』
永楽帝時。四書の注釈書。儒教解釈を固定化。科挙はこの解釈以外認めない。
・『五経大全』
五経の注釈書。
・『性理大全』
宋学(朱子学)の全集。
・『永楽大典』
類書(百科事典)。中国最大の編修事業。
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【清代】3つ
・『康熙字典』
漢字の字書。4万2000をこえる漢字を部首・画数で配列。
・『古今図書集成』
康煕帝~雍正帝の時代に編纂。
1万巻にわたる中国最大の類書(百科事典)
・『四庫全書』
乾隆帝の時代に編纂。
中国最大の叢書(そうしょ)。今までの中国の書物の分類分け。
→禁書の捜索という側面も
ポイント②儒学の発達
朱子学に対抗する新たな思想が登場
明・清では朱子学(知性重視)が官学化されていたが、対抗する学問が2つ出てきた。
陽明学(行動重視)明
・王守仁(王陽明)(15~16C)
・心即理・・本来持っている心そのものが人間の本質。感じたことが正しい。行動する。=「理」に合致するとした。
・知行合一(ちこうごういつ)・・良知と行動との自然な一体化を説く
考証学
・朱子学、陽明学などの主観を批判。客観性を重視。
・儒教の古典を実証的にきわめていく
・広く確実な文献の収集。厳密な考証の実施。
「自分の行動は儒学のこれに当てはまるからいいんだ」など、儒学の本を使って考えていく。
明末:黄宗羲(こうそうぎ)、顧炎武(こえんぶ)
清半ば:銭大昕(せんたいきん)。考証学的な史学を確立
(7)明・清の文化(2)
市民の目線から見た文化。小説・実学・宣教師。
ポイント①時代を風刺したおもしろい作品!
庶民ウケする作品。
<小説>
【明代の小説】「四大奇書」
・『三国志演義』・・三国時代の英雄
・『水滸伝』・・北宋の豪傑の武勇
・『西遊記』・・妖怪説話を混入
(↑↑これらは元で作られ、明で完成した。かっこいい中国人が描かれている。明は久々の漢民族の国家だから。)
・『金瓶梅』・・明末の新興商人階層の色と欲
【清代の小説】
・『紅楼夢』・・長編。上流社会の栄華没落。
・『儒林外史』・・長編。官僚の腐敗・堕落。
・『聊斎志異(りょうさいしい)』・・短編。怪異妖変と人間の交錯。
ポイント②実際に役立つ学問を研究しよう!
ヨーロッパ科学の影響。実学が発達。
<実学>
・李時珍『本草綱目』・・薬物。医学
・徐光啓『農政全書』・・農業技術・農業政策
・宋応星『天工開物』・・イラスト付き、産業技術書。
(工・・工業。産業)
ポイント③たくさんやってきたイエズス会宣教師たち!
彼らが中国に持ち込んだ「お土産」とは・・。
【明代】
イエズス会の宣教師
カトリックの復活をめざして布教したい。。
・フランシスコ=ザビエル(1506~1552)(西)(中国にたどり着く一歩手前で没)
・マテオ・リッチ(1552~1610)(伊)
『坤輿万国全図(こんよばんこくぜんず)』世界地図
『幾何原本』徐光啓と共訳。エウクレイデスの幾何学。
・アダム・シャール (独)
『崇禎暦書(すうていれきしょ)』(暦法)徐光啓と共同作業
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【清代】
・フェルビースト(ベルギー)
大砲
・ブーヴェ(仏)
『皇輿全覧図(こうよぜんらんず)』中国の国内地図
・カスティリオーネ(伊)
円明園(北京の北西郊外)清の離宮・庭園